先日イタリア人の友達と夕食を共にする機会があった。日本人の友達などと食事をするときは、ちょっとこじゃれたイタリアンか日本食に行くが、イタリア人と食事するときはいつも相手任せにする。一般庶民的イタリア人にとって外食というのは値段が高いので、そんなにいいところには行かない。だからよけいにどんなところに連れて行ってもらえるのかが楽しみなもんだ。決して味は悪くなくそれでいていい雰囲気のカジュアルなところに行くのがいつものお決まりだ。
今回はたくさんのイタリア人が来ていた。日本人の人もぽつりぽつりといたけれど、僕はイタリア人に連れてこられたので、その彼女にエスコートされる。イタリア人は一体どんな注文をするのだろう? 興味津々だが、案外あっさりとピザを頼んでいた。しかも出てきたのは普通の丸いピザではなく 1/4切りのサイズで、生地も厚い。この厚いタイプの生地のピザはセルフサービスによくあるもので、おいしいものはない。僕は海の幸のピザにして興味津々に食べる。ここのピザは意外といけた。
ドリンクはみんな水を頼んでいて、ワインを飲むのは僕くらいだった。ケチというのか? 節約というのか? 倹約するイタリア人を垣間見た。日本人であればイタリアンに来て、その味に舌鼓を打ちながら、このパスタはダシがどうのこうのだとか、料理の話に話を咲かせようとするだろう。イタリア人はそんな話はしない。料理は食えればいい。そんな感覚なのか? とにかく料理など関係のない自分の話をする。そんな場を目の当たりにすると、料理の話をするなんて、ある程度のステータスのある人間の特権で、余裕のある人たちのする話かのようにも思えた。
僕が映画を撮っているなんて話で紹介されると、みな日本好きなイタリア人であるからして、映画も日本に関係した話をはじめる。ありがちな北野武作品の話をはじめる。そんなの僕にとってはどーでもいい話なのだが、イタリア人が彼の作品をどういう視点で見ているかということではよかったかもしれない。
話好きの民族にはおいしいはずのイタリアンもどうでもよく思うのか? それとも安メシで味の話は避けていたのか?


今回はジェノバに訪れて帰りの電車の出発前にひもじい思いでたどりついたレストランをご紹介します。その名は「DA GUGLIE」この名前覚えておいて下さい。ジェノバブリニョーレ駅から徒歩3分。間違っても迷い込まないようにお願いします。
「トラットリア」という名前にひかれ、空腹には耐えられなかった気持ちとセルフービス以下の値段の安さに心奪われて入ってしまったのが悲劇の始まり。中に入ると持ち帰り待ちのテーブルがあり、その少し奥のピザのかまどの裏に厨房があり、その奥にテーブルがあった。そう、とんでもない店舗構造をしていたのだ。厨房が丸見え。愛想が悪くやる気のない店員。音のない空間。このいけない雰囲気に嫌な予感はしていたので、とりあえずトマトソースのパスタと、ジェノバ風ミネストローネだけ注文した。予感は的中。写真をごらんの通り。
「まずい」
パスタなんかは何日置いていたのかわからんくらい、一口目に酸味と臭みを感じた。いったい何と何を合成すればこんなに発酵するのだろうか? ミネストローネには塩と胡椒をワッサワッサとかけまくり。それでも食い尽くしたのはただ空腹に負けていただけ。床にはゴミが散らばり、フルーツポンチの入っているボールの壁にはフルーツがくっついていて、ティラミスは食いかけのようなものが置きっぱなしのようになっていた。どうプラスに見てもみすぼらしい。閑散としている。ここまでまずいレストランを見つけただなんて逆にとらえればラッキー? なのかもしれないと自分をなぐさめてみたり・・
なんとそんなところに 2人のイタリアンカップルが入ってきた。これはもしや??? 前述の味を気にしない、話をするためのイタリア人なのか? でも彼らの結末など見るまでもなくさっさと退散してしまったのは当然の成り行きである。



この日の帰りはインテルレジオナーレという各駅停車でミラノに行くつもりだった。が、雪のせいなのか何が原因かはよくわからなかったが、突然電車が出発しない、と他の乗客が言って回っていた。乗客案内所にみんなおしかけると、次のミラノ行きインテルシティ (急行かな?) に振り替え乗車しろという。料金は異なるのでみんな一斉に「支払いは?」と聞くと「無料」だという。一斉にホームに戻って行く中、「わかったか?」と心配して声をかけてくるイタリア人もいたので、確認のため聞いてみると「カレラニキイテキナサイ」と案内所に戻るように英語で促された。「だったら最初から声かけてくんなよ!!!」 このオヤジにはかかわらねぇぞ。
みんな不安になりながら電車を待つ。要領を得ていないホームに立ち尽くしている車掌が客から罵声を浴びせられていたりもした。そしてもともとの各駅の電車がなぜか出発して行き、一部の客がインテルシティ待ちをしている。「うーん、ホントにミラノに行くのだろうか?」とずっと不安になりながら乗っていた。いつもと違う窓の外の景色に見え、ミラノとは別方向に向かっているのでは? 検札が来たときにどうやって説明すべきか? 不安はつきなかったが、僕みたいな客が多かったせいか、検札は来ないままミラノへと無事たどりついた。
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