イタリアンスマイルズ

  •  こちらのブログはイタリア在住の映像作家池田剛の撮影する映像とエッセイを掲載しているものです。製作中の映画「GLI ARTIGIANI」の映像を始め、イタリア各地の心温まる映像ビデオポッドキャスティングという形でお届けしています。

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2006年3月30日 (木)

花の表情

 家の近くの停留所でバスを降りると懐かしい空気を感じる。わずかながらの色に僕が反応したのはピンク。ソメイヨシノの発祥地で育った僕は、小さいながらも車が走り抜ける通りの横で生き抜くサクラに心を奪われる。子供の頃に味わったのは、ソメイヨシノの花のアーチをくぐり抜け学校へ通った日々であり、まるで花が僕を迎え入れてくれているようだった。陽の光とともに伝わる温かさに感謝して、サクラの美にひたる。
 イタリアでは花見の習慣はない。イタリア人の住むベランダにはかなりの割合で植木が置いてある。心の余裕というべきか、とても愛らしさを感じさせてもらえる。イタリアを歌舞伎と例えるのであれば,日本は能。僕が思うに能は静かな中に生きる温度を感じさせる芸術のようで,日本独特のものであり、自分の作風に近い気がする。
 ゴロゴロ鳴り響いていた雷もウソのように,暖かい春の陽気が射してくる。駅前ではスケボーをしたり、サッカーボールとじゃれあう少年たち。バスに乗り込むと「ヴァレリアー! ヴァレリアー! 」と呼ぶ男の子が二人。当のヴァレリアはお母さんと一緒に席で落ち着いていた。呼び声に気付いたヴァレリアはスッとドア付近まで近寄り、手を差し出して合図を送る。何気ない風景に心も温まる。一度サヨナラをして距離を置いても、それでもまだコンタクトを取ろうとする。
 こんなやり取りを見る度にいつも日本人の距離感の長さを想う。子供であるからこのような風景は日本にいても皆無ではないにしても、懐かしめるのは何故だろうか? 例えばドゥオーモに行く車内アナウンスのない地下鉄の中で日本人と出くわしたとして、僕が予想するのは真横にいながら「次ドゥオーモだよね? そうだよね?」とわざと僕に尋ねるかのように、隣りにいる友達か恋人に確認する。この辺、中国人はたくましいというか区別がつかないのか、日本人にはよく声をかけてくる。
 日本人はサクラを美とする。それはなんとなく絵画的な気もする。生き方も伝統的に静けさを他人に読んでもらうものののようだ。日本人の心の根に息づいているものなのだろう。
 クリスマスから大事に温室育ちにさせていたポインセチアもこの暖かさに機嫌を良くしたのか、いつになく元気そうだった。彼が生き続けていてくれるというだけで彼は僕を楽しくさせてくれる。



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コメント

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ずいぶん綺麗に咲き誇っていますね!ということはこちらよりあたたかいのでしょうか?はかないもの散りゆく桜に風情を感じるのは日本人独特の感情ですね

日本も今年はおくればせながら桜前線がやって来ています。春生まれの贔屓目でしょうか?私はこの時期が一番好きです。長い冬を乗り越え一気に花開く。そして潔く散っていく。その一瞬の美しさがそして儚さが心にジーンときます。桜がイタリアにもあるとは思いませんでした。お花見楽しんでください!!

幼い頃の、桜の思い出、とても素敵ですね。都会の子供は、自然との思い出って少ないのでは?と勝手に思っていました。ごめんなさい。確かに自然は少ないかもしれないけど、ちゃんとはっきりと感じている思い出があるのがいいですね。考えてみたら、都会の方が、少ない分ものすごい見せ方が上手だと思います。田舎は、建物にしても、街の並木にしても、見せ方が下手だと感じることが多く、残念です。ただ、自然にある自然は、本当に素晴らしいです。
ポインセチアの写真、何か、色合いが好きで、心癒されました。私は、今、花粉症のため、あまり外に出ないようにしていますが、桜は、頑張ろうと思っています。でも、イケピーのブログを見て、今日は、ひとりで春を探しにいくのもいいなと思いました。今、私が感じている春は、花粉症と、道ばたに咲く菜の花と、ベランダのほったらかしていたベビーリーフが黄色い花を咲かせたことくらいです。

 たかよさん、こんにちは。
 ミラノはサマータイムにもなってだいぶ暖かくなっています。街中でもほとんど見ないこのサクラの花に感慨深くなってしまうのは日本人だけなのでしょうか? だとしたら日本人であってよかったと思えますね。

 chiruchiruさん、こんなところにサクラがあるとは僕もビックリ。でも意外と気付かない所にありそうな気もします。なんだかchiruchiruさんの表現する,短命でありながらも太く強く生きる姿はサムライのようですね。僕も野太くありたい。そんな心を忘れずに生きていたいです。

 mautakoさん、やはり東京でありますから,自然と触れた記憶なんてほとんどないですよ!!! 小学生の頃の校庭にソメイヨシノの大きな木が一本、ドーンッとあったものの、まわりにあるのは住宅街。それでも僕の故郷はまだ自然の多い方で、古い時代の庭園がいくつか残っていますし,有名人がたくさん眠っている広大な墓地があります。そしてここあそことソメイヨシノが埋まっています。そう考えればまだ恵まれていたのかな?
 季節外れのポインセチアもクリスマス好きの僕をなぐさめてくれているようで、感情移入しています。彼も元気になるくらいの陽気ですから,たまにはトラムに乗らずに街の中を歩いてみたら、何かしら発見があるかもしれないです。いろいろと寄り道をしてみます。

昨年引越してきた家の近くに寺と公園があり、それは見事に桜の花を咲かせます。九州もそろそろ満開の季節ですよ。
一年のうち、春の季節だけしか人から注目されないけれど、春夏秋冬色んな表情があるのでしょう。満開の桜も好きですが、風邪に吹かれてヒラヒラトと散りゆく姿も粋なもの。
桜の下で大好きなウォッカを飲めると楽しいでしょうね。
あ、イタリアでそんなことやったら捕まっちゃいますね!?

 kiyokiyoさん、サクラの下で酒を飲んでいたら僕の場合いつの間にかサクラの上にいる事でしょう!? 静かに情緒を感じられる場所でサクラを楽しむこともできないので,やはりこの感覚は日本でしか味わえないのでしょうか? 夢のような心地よさにただうつつを抜かすように、正にそんな時を夢見ています。

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